なぜそうなるか
お酒を売る側に回ると、かかる法律は2つある——酒税法第9条は「販売場ごと」に免許を求め、二十歳未満の飲酒を禁じる法律は営業者に年齢の確認を求めていました
お酒の免許というと、酒屋さんの店先に掲げられた「酒類販売」の看板を思い浮かべる人が多いでしょう。免許が要るのは店を構える人だけ、という印象を持っている方もいるかもしれません。
家にあるお酒を1本手放すだけなら免許は要らない、という国税庁の答えは、前の記事で読みました。では、その線を越えて「売る側」に回ったとき、何が求められるのでしょうか。
国税庁の Q&A は、法律の中身を短く言い換えたものです。言い換えのもとになっている条文は、別に在ります。お酒の販売の免許を定めているのは酒税法で、その第9条です。
もうひとつ、お酒を売る人に向けた決まりがあります。大正11年にできた「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」です。カタカナまじりの古い文体のまま、いまも効力のある法律です。
この記事では、2つの法律の条文を e-Gov 法令検索の本文から取り、2026年9月27日の時点の文言のまま並べます。国税庁の Q&A とは違い、条文は言い換えずにそのまま引きます。
扱うのは、条文に何が書いてあるかまでです。自分の売り方が免許の要る「販売業」にあたるかどうかは、この記事では決めません。所轄の税務署の酒類指導官に確かめてください。
・酒類の販売業には、販売場ごとに税務署長の免許が要る(酒税法第9条)
・「販売業」には、販売の代理業と媒介業も含まれる(同条)
・免許なしで販売業をしたときの罰則は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(酒税法第56条)
・お酒を売る営業者は、二十歳未満の者の飲用と知って売ってはならない(飲酒禁止法第1条)
・営業者には、年齢の確認などの措置が求められている(同条)
お酒の販売の免許は、どの法律のどこに書いてあるの?
お酒を売るのに免許が要る、というのは法律のどこに書いてあるの?
第9条の見出しは「酒類の販売業免許」。最初の文は、誰が免許を受けるのかを定めるところから始まります。
酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、
ここでいう「販売業」には、自分で売ることのほかに、販売の代理や媒介も入っています。売り手と買い手をつなぐ立場も、条文の上では同じ言葉でくくられるわけです。
文は、免許をどこで、誰から受けるのかへと続きます。
免許は、人ではなく「販売場」ごとに受ける形です。販売場は「継続して販売業をする場所」という定義です。店を持たずに売る場合は、住所地の税務署長の免許になると、かっこの中に書かれています。販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。
免許が要らない場合は、条文に書いてある?
居酒屋でビールを出すのにも、販売業免許が要るの?
第9条の1項には、ただし書きが1つあります。酒類の製造者が自分の製造場で売る場合と並べて、次の文があります。
酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業については、この限りでない。
店の中で飲んでもらう業は、販売業免許の枠の外です。「もつぱら」という語は、原文の表記のままです。
2項は、期限つきの免許の話です。
博覧会場、即売会場その他これらに類する場所で臨時に販売場を設けて酒類の販売業をしようとする者であると認められるときは、税務署長は、当該販売場に係る同項の販売業免許につき期限を付することができる。
催しの会場で一時的に売る場合も、免許の外ではありません。期限を付けた免許にすることができる、という書き方でした。
免許を受けずに売ると、どうなるの?
免許なしで売り続けたら、罰則はあるの?
第56条は、罰則の対象をいくつもの号に分けて並べた条です。その1号目が、販売業免許についての行です。
第九条第一項の規定による販売業免許を受けないで酒類の販売業をした者
この行を含む各号にあたる者について、条の冒頭は刑の重さを次のように定めています。
一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
刑の名前は、e-Gov の本文では「拘禁刑」と書かれています。罰金と並べて、どちらかを科す形です。
お酒を売る人には、年齢のことも求められている?
お酒を売るとき、買う人の年齢まで気にしないといけないの?
この法律の第1条には、項が4つあります。1項は、飲む側についての短い一文です。
二十歳未満ノ者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス
3項が、売る側に向けた禁止です。主語は「営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者」と、仕事としてお酒を扱う人に絞られています。
営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ二十歳未満ノ者ノ飲用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス
4項は、禁止ではなく、講じるべき措置を書いた項です。
営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス
3項に反したときの罰は、第3条が定めます。
第一条第三項ノ規定ニ違反シタル者ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス
同じ第3条は、2項に反した親権者などを科料に処すとも書いています。第4条には、従業者が違反したとき、行為者のほかに法人や事業主にも罰金を科す定めがあります。
酒税法の側にも、この法律の名前が出てきます。第10条は、販売業免許を与えないことができる場合を並べた条で、その号のひとつに「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」の規定が挙げられています。2つの法律は、免許の要件のところでつながるのです。
この記事で確認したこと
・酒類の販売業(代理業・媒介業を含む)には、販売場ごとに所轄税務署長の免許が要る(酒税法第9条1項)
・酒場・料理店など、自分の店で飲ませる業はこの限りでない(同項ただし書き)
・臨時の販売場には、期限つきの免許がありうる(同条2項)
・免許なしで販売業をした者は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(酒税法第56条)
・お酒を売る営業者は、二十歳未満の者の飲用と知って売ってはならず、年齢の確認などの措置を講じる(飲酒禁止法第1条3項・4項)
よくある質問
フリマで家のお酒を1本売るだけでも、第9条の免許が要りますか
国税庁は、家庭で不要になった酒類を出品するような場合は販売業免許は要らないと答えています。その答えは前の記事で原文から並べました。続けて売る場合の線引きは、所轄の税務署に確かめてください。
飲酒禁止法の「営業者」に、個人の出品者は入りますか
条文は「営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者」と書いているだけで、個人の出品者を名指ししてはいません。この記事では、どこまでが営業者にあたるかは判断していません。
条文がカタカナなのは、古い法律だからですか
この法律は大正11年の法律第20号です。e-Gov の本文も、カタカナまじりの文体のまま載っています。
この整理が変わる条件
- 酒税法や、二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律が改正された場合(本記事は2026年9月27日に e-Gov で読んだ本文)
- 国税庁が、販売業免許の取扱いの通達や Q&A を改めた場合
- 自分の売り方について、所轄の税務署が個別に判断を示した場合
出典
- 酒税法(昭和二十八年法律第六号)第9条・第10条・第56条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000006
- 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(大正十一年法律第二十号)第1条・第3条・第4条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC1000000020
お酒を続けて売ることを考えているなら、販売場の所在地を所轄する税務署に、免許が要るかをまず確かめてください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: